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お役立ち情報

杉田 周平

NIHON KEIEI (INDIA) Pvt. Ltd. / Director

2026/1/5

インドのTDS(源泉徴収制度)の仕組みと実務

インドのTDS(Tax Deducted at Source:源泉徴収制度)は、日本よりも対象範囲が広いことが特徴です。最新の情報に基づき、改めて基本的な仕組みと日本との違いを整理してお伝えします。

TDS(源泉徴収制度、withholding tax)とは

TDSは、Tax Deducted at Sourceの略で、源泉徴収制度のことです。他国ではwithholding taxと呼ばれることも多いですが、インドではTDSという呼び方が主流です。

主に法人税・所得税を、税務当局に代わって取引当事者に徴収させる制度で、取引における支払人(つまり雇用者側やサービスを買った側)が、支払い時に所定の税率で所得税等を天引きし、受取人側の代わりに税務当局に納付します。そして受取人は、最終的な法人税・所得税から支払い済みのTDSを差し引いて、差額の支払いもしくは還付を受けることになります。

税務当局にとっては、受取人による申告漏れや税逃れを防いで税金が確実に徴収できるほか、税務当局・受取人の事務負担の軽減というメリットもあります。

インドと日本とのTDSの違い

インドと日本のTDSには大きな違いがあり、日本人がインドでビジネスをするときには、理解が必要です。

対象範囲

日本においては、源泉徴収の対象は、給与、原稿料や講演料、弁護士・税理士個人への支払いなど限定されています。一方、インドでは、給与や弁護士等のプロフェッショナルサービス、技術サービス、オフィス賃料等、幅広い支払いが対象となります。さらに、支払先が法人の場合でも対象になりますので、会社間の支払いでも源泉徴収対象でないか、確認が必要になります。さらに分かりにくいことに、請求書には、源泉徴収の対象であるか否かは記載義務がなく、支払側が判断して源泉徴収する必要があります。

制度の厳格さ

日本では故意に徴収しなかった場合、重加算税の対象となることもありますが、ミスの場合には修正申告での救済が可能です。一方、インドでは故意及び過失の不徴収に対してペナルティがあり、担当者個人にも責任が及ぶ可能性があります。ミスの場合には罰金免除や、和解金による刑事罰責任回避の制度もありますが、手続きは日本より煩雑です。また、インドではPAN(納税者番号)を取得していない受取人については、高税率が課されるなど、徴収漏れをしっかり防ぐ制度設計となっています。

当局の運用のスタンス

これらの特徴から見えてくる二国間の運用のスタンスの違いとして、日本では脱税防止と納税者の利便性の二面性を持たせている一方、インドでは脱税防止と早期徴収の色合いが濃いといえます。

インドのTDS(対象取引、税率、納付スケジュール、還付)

対象取引と税率

前述の通り、インドのTDSの対象取引は日本より幅広く、以下は2025-2026年度版の一部抜粋です。

所得税法

項目

源泉税率

免除規定

192

給与(2025年度、60歳未満、新税率適用の場合)

累進課税(~30%)+cess4%

受取人の非課税枠内(年間40万ルピー)

194

利子

10%

年度内計1万ルピー以内等

194

配当

10%

年度内計1万ルピー以内

194-IB

家賃(個人が支払う場合)

2%

月5万ルピー以内

194-I

家賃(法人が支払う場合)

10%

月5万ルピー以内

194-I

リース料(工場・備品等)

2%

月5万ルピー以内

194H

仲介手数料(コミッション)など

2%

年度内計2万ルピー以内見込み

194J

技術サービス料

2%

年度内計5万ルピー以内見込み

194J

その他の専門サービス料

10%

年度内計5万ルピー以内見込み

194C

Contractorへの支払い(ドライバー付き車両を含む)

対法人:2%
対個人:1%

3万ルピー以内/回
または
年度内計10万ルピー以内見込み

194Q

総額50万ルピーを超える商品の購入代金

0.1%

前年度の購入者の売上高が1億ルピー以下
または
年度内計50万ルピー以内


実務に使うフォーム、システム、月次の基本的な流れ

インド国内でA社からB社が専門サービスを受け、費用を支払うという会社間の取引のケースを用いて、TDSの徴収、納付、報告の流れを説明します。

日々の対応

  1. A社はB社に対して10万ルピーの専門サービス費用を請求します。

  2. B社では受領した請求書に記載されているサービス費用のTDS税率が10%であることを自ら確認し、税額が1万ルピー(10万ルピーの10%)であることを計算し、A社に対して税額を差し引いた9万ルピーを支払います。

月次の対応

B社は翌月7日まで(3月分は4/30まで)に税務当局に対して源泉徴収した1万ルピーをe-Filingというサイトから納税します。

■源泉徴収税納付期限

請求書の支払月

納付期限

4月~2月

翌月7日

3月

4月30日

四半期の対応

  1. B社はTRACES(TDS Reconciliation Analysis and Correction Enabling System)のサイトから四半期ごとにTDSを申告します。この時、インド居住者との取引分(Form 26Q)と非居住者との取引分(Form 27Q)は異なるフォームを使用します。申告期限は各四半期終了後、翌月末までです。(第4四半期分は5月末まで)

  2. B社はTDS証明書(Form 16A)をTRACESからダウンロードし、A社を含む各支払先に発行します。発行期限は各四半期申告期限から15日以内(第4四半期分はは6月15日まで)です。なお、会社から従業員への給与支払いに対するTDS証明書はForm16で、年1回、6月15日までに発行します。

四半期申告期限

対象期間

Form26Q/27Q 申告期限

Form 16A 発行期限

第1四半期(4~6月)

7月末

8月15日

第2四半期(7~9月)

10月末

11月15日

第3四半期(10~12月)

1月末

2月15日

第4四半期(1~3月)

5月末

6月15日

年度終了後の対応

当該年度が終わると、確定申告(Income Tax Return)を実施します。A社は、未払法人税とTDS(B社経由で納税済み)を相殺して納税・還付の手続きを実施します。

日本企業がインド企業に請求した場合の考え方(日印租税条約による軽減税率の適用)

日本企業がインド企業に何らかの請求をした場合においても、内容に応じて、TDSの対象となります。その際、日本企業側で何も準備をしていないと、最大40%近い源泉徴収を受けるリスクがあります。それを防ぐためには、日印租税条約(二国間租税条約)による軽減税率が適用できるよう、あらかじめ準備が必要です。

日印租税条約とは

日印租税条約とは、1989年に発行された、日印両国の居住者が①同一所得に対して二重課税されることを防ぎ、②意図的に税率の低い国で課税を受けることを防ぎ、③税制面での不確実性を減らして企業活動を促進するための条約です。

事業所得については、「PE(恒久的施設)なければ課税なし」の原則に基づき、原則として相手国にPEがなければ、その国では課税されません。また、インド滞在中の日本在住者に対して日本企業から支払われる給与については、短期滞在者免除等の論点があります。いずれも今回のTDSのテーマから外れるため、詳細は割愛します。

日印租税条約における源泉徴収税の取り扱い

日印租税条約では、源泉税率について、利子所得、配当所得、ロイヤルティーおよび技術役務提供報酬のいずれも、上限10%と定められています。

例えば、日本企業がインド企業(在インド子会社を含む)に技術者を派遣し、技術サービス料を請求した場合を想定して、日印租税条約の適用有無を比較してみます。日印租税条約を適用しない場合、外国法人に対する法人税の最大値である40%近い源泉徴収を受ける可能性があります。一方、日印租税条約を適用すると、軽減税率として源泉徴収は10%となります。

さらに、日印租税条約を適用した際に源泉徴収された10%については、日本企業側の法人税において、税額控除(外国税額控除)の対象とすることができます。詳細は日本の会計士・税理士にご相談ください。

軽減税率適用のための事前対応

この軽減税率の適用を受けるには、インド企業から日本企業への支払いの前に、日本企業側で下記3点の必要書類を準備し、「日印租税条約を適用して源泉徴収を10%にしてほしい」とインド企業側に伝える必要があります。

■必要書類

Tax Residency Certificate (TRC)

日本の税務署から取得する、居住者証明書。日本企業が日本居住者であることを証明する。1年間有効。

・ Form 10F

インド税務当局が指定するフォーマット。社名・住所等の基本情報以外に、納税者番号、所得の性質等を記載。なお、納税者番号はPANがなければ、日本の法人番号でもよい。

No Permanent Establishment (PE) declaration(PEがない旨の宣言書)

租税条約の「PE条項」に基づいて、受取法人がインドに課税権を生じさせるPE(恒久的施設)を持っていないことを宣言する文書

【免責】本資料は公開情報を基に作成した一般的な情報提供であり、内容の正確性や完全性を保証するものではありません。実際の取引や判断にあたっては、必ず専門家にご相談ください。当社は本資料に基づく判断・行動により生じたいかなる損害についても責任を負いかねます。

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About Author

2016年に日本経営ウィル税理士法人(現:税理士法人 日本経営)に入社。2年目から海外事業に抜擢され、2018年にはフィリピン拠点を立ち上げて現在も取締役として運営に携わる。2024年7月からはインドに赴任し、日系企業の進出支援やM&A対応、会計アウトソーシング、税務調査など、インド市場に特化した幅広いサポートを行っている。2025年4月よりDirectorへ就任。

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