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杉田 周平
NIHON KEIEI (INDIA) Pvt. Ltd. / Director2026/2/4
インドの会社秘書役とは?日本にはない「会社法の専門職」を徹底解説!
インドで会社経営に携わると必ず出てくるキーワード、会社秘書役(Company Secretary:CS)。いわゆる「秘書」(役員補佐)とは全く異なり、会社法の専門家として国家資格を持つプロフェッショナルを指します。今回は、この会社秘書役(CS)について、詳しく解説します。
1.会社秘書役(CS)とは?
会社秘書役(CS)は、会社法(Companies Act, 2013)に基づき、会社が法令順守のもとで適正に運営されるよう管理する専門職です。取締役会や株主総会の開催・登記・法定報告・議事録作成など、会社運営の根幹に関わる法務実務を担います。
2.会社秘書役(CS)が存在する国は?日本は?
インド以外にも、イギリス、カナダ、オーストラリア、シンガポール、香港などで会社秘書役(CS)制度が存在します。
国によって設置基準や資格制度に差はありますが、共通して次のような役割を持ちます。
会社法順守・登記関連手続き
株主・取締役会の運営・議事録管理
内部統制・コーポレートガバナンス支援
一方、日本には会社秘書役(CS)という国家資格制度はありません。日本では、これらの業務は司法書士・行政書士・社内法務部・役員本人などが分担して担っています。
3.インドの会社秘書役(CS)制度
1)設置義務
インドでは、資本金が1億(10crore)ルピー以上の会社に対し、常勤の会社秘書役(CS)を置くことが義務付けられています。資本金が1億ルピー未満の会社では、法的義務はありませんが、会社秘書役(CS)と顧問契約を結び、各種法定書類の提出、年次申告、登記変更手続きなどを委託するケースが一般的です。
2)業務内容
インドの会社秘書役(CS)の業務は、同じく国家資格である勅許会計士(Chartered Accountant:CA)と密接にかかわりあっています。資本金や会社の規模に応じて、会社秘書役(CS)が関与する範囲は多少異なりますが、主な業務は以下のとおりです。
①会社設立に伴う書面整備・提出
会社設立時には、定款(MOA:Memorandum of Association)や細則(AOA:Article of Association)などを法令に沿って作成し、電子署名(DSC:Digital Signature Certificate)の取得やMCA(企業省:Ministry of Corporate Affairs)へのオンライン登録申請(SPICe+:Simplified Proforma for Incorporating a Company Electronically Plus)を行います。設立後も、GST(Goods & Services Tax)登録、銀行口座開設、初回取締役会(Board Meeting)の議事録作成などを支援します。資本金に関する部分や銀行口座、GST等の税務関係を中心に、勅許会計士(CA)と連携しながらの業務となります。
②取締役会の開催と報告書類提出
会社法で定められた頻度・手続きに従い、取締役会や株主総会を開催するにあたり、会社秘書役(CS)は一般的に以下を担当します。
会議招集通知(Notice, Agenda)の作成
議事録(Minutes)の作成および法定簿への記録
取締役変更・資本金変更・定款変更などに伴うROC(企業登録局/法務局:Registrar of Companies)届出(例:DIR-12, SH-7, MGT-14)
年次財務諸表・取締役報告書の電子提出(AOC-4, MGT-7A)
③取締役の維持管理
会社法では、取締役・株主・株式・担保・契約などに関する法定帳簿(Statutory Registers)を維持することが義務付けられています。会社秘書役(CS)はこれらを最新の状態に保ち、監査やM&Aデューデリジェンスの際に参照できるよう整備します。
主な帳簿:
Register of Members(株主名簿)
Register of Directors & KMP(役員・主要人員名簿)
Register of Charges(担保権登録簿)
Register of Contracts(関連当事者取引記録)
④年次コンプライアンスの実施
企業は年度ごとに、取締役会の承認・株主総会の開催・財務諸表の承認・MCA(企業省:Ministry of Corporate Affairs)報告など、様々な期限付きの義務を負っています。会社秘書役(CS)は勅許会計士(CA)と連携しながらこれらを管理し、AOC-4(決算書)やMGT-7A(年次報告)の作成・提出をサポートします。
⑤法改正・登記対応のアドバイス
インドでは会社法・FEMA(外国為替管理法)・税法などの改正が頻繁に行われます。会社秘書役(CS)や勅許会計士(CA)は法改正情報をモニタリングし、必要な届出や内部規程の更新を助言します。また、外国人取締役がいる場合は、会社秘書役(CS)がDSC更新・取締役KYC(DIR-3 KYC)・在外住所証明書類の提出など、必要な手続きを支援します。
⑥その他のスポット業務・臨時対応
取締役や株主の交代
住所変更・増資・減資
支店設立
銀行・監査人・税務当局への文書発行サポート
MCA差戻し(resubmission)対応
4.会社秘書役(CS)の資格制度
会社秘書役(CS)はインドの国家資格の中でも難関とされる資格です。インド全土では2025年5月現在、7.3万人の登録があり、そのうち1.2万人が独立開業会員として登録しています。
資格取得には3段階の試験と実務訓練を経て、会員登録を行う必要があります。一般的に、取得までには2年半から5年ほどかかるとされています。
なお、会社秘書役(CS)資格に、国籍要件はありません。ただし、条件を満たした場所での実務訓練が必要なこともあり、外国人にとっては難易度の高い資格といえます。
以下に、試験および実務訓練の概要を示します。
1) CSEET(Company Secretary Executive Entrance Test)
高校卒業資格で受けられる、会社秘書役(CS)への入り口となる試験です。英語、論理、時事、商業基礎の4科目からなり、いずれも選択式です。合格率は50%台から70%台と変動があります。
2) Executive Programme
CSEETに合格すると、Executive Programmeに登録し、受験資格が得られます。最新の試験科目は、会社法、証券法、税法、経済法などで構成されており、2モジュール7科目の主に記述試験です。専門領域に関する理論と実践知識の両方が問われ、合格率は各モジュールで10%台から30%台とされています。登録後はICSIのオンライン教材や過去問を閲覧できますが、一般的には、オンラインを含む塾や個別指導に通う受験者が多いようです。
3) Professional Programme
経営層への助言能力が問われるケーススタディー形式の論述式試験です。最新の試験科目には「コンプライアンス管理・監査・デューデリジェンス」や「企業再編・企業価値評価・倒産法」などが含まれ、2グループ8科目(うち2科目は選択科目)の構成です。合格率は各グループで10%台から20%台となっています。
4)Internship
企業、会社秘書役(CS)事務所、法律事務所などで21カ月間の実務訓練を行います。この訓練は、2)の試験に合格した後に実施可能で、3)のプログラムと並行して実施することも可能です。
これらをすべて終えた後、ICSI(Institute of Company Secretaries of India)に入会金を支払い、Associate Member(ACS)として登録することで、正式に会社秘書役(CS)を名乗ることができます。
その後5年間の実務経験とICSIによる審査を経ると、上級会員であるFellow Member(FCS)に昇格します。
また、ACSやFCSが独立して業務を行うために Certificate of Practice(CoP)を取得すると、Member in Practice(PCS)の会員区分となり、顧客企業へのコンサルティングや法定書類の認証業務などを行うことができます。
以上の通り、日本ではあまり馴染みのない会社秘書役(CS)という制度は、インドの会社運営において非常に重要な役割を担っています。特に、現地法や手続きに不慣れな外国人経営者にとっては、会社法務を支える心強いパートナーとなる存在です。インドで事業を行う際は、その役割を正しく理解し、ぜひ上手に活用してみてください。
日本経営インディアでは、会社秘書役(CS)や勅許会計士(CA)の様々なサービスを、お客様それぞれに合わせた形でご提供しております。サービスに関するお問い合わせは、下記の「お問い合わせはこちら」からご連絡ください。
<参考>
https://www.icsi.edu/home/
(The Institute of Company Secretaries of India)
CSへのヒアリングを基に作成。
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About Author
2016年に日本経営ウィル税理士法人(現:税理士法人 日本経営)に入社。2年目から海外事業に抜擢され、2018年にはフィリピン拠点を立ち上げて現在も取締役として運営に携わる。2024年7月からはインドに赴任し、日系企業の進出支援やM&A対応、会計アウトソーシング、税務調査など、インド市場に特化した幅広いサポートを行っている。2025年4月よりDirectorへ就任。
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